世界の迷機・珍機その1 「ボールトンポール デファイアント」 ー四連装の変態ー

 今日はイギリス戦闘機の話をします。

 

ボールトンポール デファイアント

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第264飛行隊のデファイアント  "Boulton Paul Defiant" by D.J.Daventry Wikipediaより

 第二次世界大戦期のイギリスの名機…ならぬ迷機です。

 スペック

 全長:10.77m

 全幅:11.99m

 全備重量:3,900kg

 エンジン:ロールスロイス・マーリン3(1,030馬力)

 最大速度:489km/h

 航続距離:750km

 武装:7.7mm機銃×4

 乗員:2名

  イギリス軍は、第一次世界大戦中、敵爆撃機と並走して複葉戦闘機(ブリストル F.2ファイターなど)の旋回機銃で敵機を撃墜する戦法で大きな効果を上げていました。

 そこで、「パイロットは操縦に専念し、機銃手は攻撃に専念できる!」という発想のもと、後部に7.7mm4連装旋回機銃を装備する重武装の複座戦闘機として開発されたのが、この「ボールトンポール デファイアント」です。

 「デファイアント」とは、挑戦的な、といった意味ですが、挑戦的にしても程がありますね。

  旋回機銃を装備を装備することで、敵爆撃機の銃座の死角に入り安全に射撃を行うことも狙いとしていたようです。

 しかもこの銃座、垂直尾翼に当たらないように、垂直尾翼に当たる角度の時は自動で射撃を停止するという優れもの(棒読み)。

  そして実戦

1939年12月に配備が開始されたこの機体は、イギリスに飛来するドイツの航空機を多数撃墜。

 続くバトル・オブ・ブリテンでも大活躍!…とはいきませんでした。

 実は、先ほどの戦果はこのデファイアントとシルエットが似ている「ホーカー ハリケーン」とドイツ機が誤認し、後ろについたところを撃墜したものが多数含まれていました。

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      デファイアントとシルエットが似ているといわれるハリケーン。      出典:Wikipedia  "Hurricane IIC 87 Sqn RAF in flight 1942" by RAF

 バトル・オブ・ブリテンでは、前方から撃ってくるドイツ戦闘機に後部銃座では対応できず大苦戦 。そりゃそうだ。

 デファイアントの欠点は、

・後部に旋回式四連装機関銃を装備したので重い

・複座なので重い

・単座のハリケーンと同じエンジン、翼面積なので速度・機動性・上昇力共に低い

・前方に武装を装備していないため、前方からの攻撃に極端に弱い

など。

 WW1の時の同じコンセプトの戦闘機、F.2ファイターは前方にも機銃がついていました。なぜ本機にも前向きの武装をつけなかったのか…

 重い後部銃座に加え前方機銃まで装備するとなるとさらに重量が増加して性能が悪化すると考えたのかもしれませんが、それなら最初から全ての武装を前方に配置すればよかったのでは、という疑問を禁じ得ません。(実際、同じエンジン、ほぼ同じサイズの機体を持つハリケーンはそれで成功した)

  多大な被害を出したデファイアントは、夜間戦闘機として運用されることになりました。旋回機銃を後のドイツや日本の「斜銃」の様に使い、一定の戦果を挙げたようです。しかしながら、デファイアントは他の夜間戦闘機と違い、パイロットに負担が掛かり、効率的ではありませんでした。

 

 戦闘機としては失敗だったデファイアントは、第一線を退いていくこととなるのでした…

 

 

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