WW2開戦時の英国海軍の戦闘機開発に関する考察
第二次世界大戦開戦当時、世界で三本の指に入る海軍力を持っていたイギリス海軍。
しかし、そのイギリス海軍の開戦当時の航空機を見ると、
スクア 単発複座低速の艦上爆撃(戦闘)機
約360km/h、7.7mm 4、7.7mm 1、500lbs
フルマー 単発複座低速重武装の戦闘機
約400km/h、7.7mm 8
シーグラディエーター 鈍足旧式弱武装の複葉戦闘機
約410km/h、7.7mm 4
約220km/h、680kg
ロック 単発複座超低速の艦上戦闘機
約360km/h、7.7mm 4
と、速度・武装だけで比べているため一概には言えませんが、近代的で高性能な航空機を持っていませんでした。
他国(日本、アメリカ、英空軍、ドイツ)と比べても、
零戦 530km/h、20mm 2、7.7mm 2
F4F 530km/h、12.7mm 4
ハリケーン 520km/h、7.7mm 12/20mm 4
スピットファイア 580km/h、20mm 2、7.7mm 4
BF109 570km/h、20mm 3、7.7mm 2
SBD 400km/h、1000lbs
99式艦爆 380km/h、250kg
Ju87(ただし旧式)310km/h、500kg
97式艦攻 380km/h、800kg
TBD 330km/h、2000lbs
となっています。
これはいったいなぜなのか?
自分の考えを述べます。
※あくまで私自身の考えです。実際には違うこともあるでしょう。認識が間違っていることもあるでしょう。あくまで参考程度に捉えてください。
開戦当時、イギリス軍ヨーロッパ方面での主な敵はドイツ軍とイタリア軍でした。
ドイツ軍は高性能な航空機を持っていましたが、基本的に航続距離は短く、バトル・オブ・ブリテンでもBf109が大きな被害を被った原因のひとつに航続力不足があるともいわれています。空母は保有しておらず、イギリス海軍ほどの洋上作戦能力は持っていませんでした。
イタリア軍では主力の戦闘機はCR.42などで、高速のMC.200は開戦1年後に実戦配備されるなど、有力な航空戦力は少数でした。
上記の理由などから、強力だが航続距離の短いドイツ戦闘機と戦闘を行うことは少なく、旧式機が多いイタリア軍や低速の爆撃機は速度性能の低いフルマー、旧式のグラディエーター、ソードフィッシュでも十分対処可能と考えたのではないでしょうか。
実際、約400km/hと低速のフルマーや複葉のシーグラディエーターでもイタリアの複葉機CR.42には十分に対抗できたそうです。
旧式のソードフィッシュは、速度が遅すぎて一撃離脱を主戦法とするドイツ機では照準が困難ということもあったのだとか。
そのために、高性能な航空機を開発しようとても、予算は強力なドイツ軍と戦闘を行う可能性の高い空軍に優先的に回され、海軍に回されることは少なかったのかもしれません。
ただし、一つ不可解な点があります。それは、極東での戦闘についてです。
日本軍機は軒並み格闘性能が非常に高く、登場は遅いながら零戦や隼は英海軍機に比べれば高速、重武装(零戦のみ)、高機動を兼ね備えた戦闘機でした。
実際に、低速のフルマーやソードフィッシュは、格闘性能の高い日本軍機にバッタバッタと落とされ、大した戦果を挙げ得なかったと言います。
このように、特に格闘性能に特筆すべきものがある日本戦闘機に十分対抗可能な航空機を開発しなかったことはなぜなのでしょうか?
極東方面には、ハワイ、そしてフィリピンにアメリカ軍の基地がありました。アメリカ軍は有力な戦力を持っていたため、極東で戦闘が起こった際には、アメリカによる支援を予定していたのではないか、と考えられます。
ハワイの米戦艦群、アメリカの基地があるフィリピンがあっさりと壊滅することなど想定外だったのでしょう。
そもそも、イギリスはアメリカほど潤沢な資金も、強力な工業力も、膨大な資源も持っていませんでした。
「隔月刊正規空母エセックス級、月刊軽空母インディペンデンス級、週刊護衛空母カサブランカ級、日刊駆逐艦フレッチャー級、三時刊規格型輸送船リバティ」と評され、ヨーロッパ、極東で同時に3か国を相手に全力を出しても勝てるようなアメリカと比べること自体がおかしいのです。
強力なドイツ軍に対抗するためには、ヨーロッパ方面に力を入れるのは仕方のないことだったのでしょう。